安倍晋三日本首相が22日、バンドン会議60周年アジア・アフリカ会議で演説し、「植民支配に対する謝罪」の代わりに「先の大戦への深い反省」だけを言及した。この表現をどのように受け止めるかが今後の韓国外交の新たな課題に浮上することになった。
和田春樹・東京大学名誉教授(史学)はこの日、ハンギョレとの通話で「安倍首相が『過去の日本政府の歴史認識を継承する』と言及せずに、先の戦争への反省だけを話したのは歴史認識の後退」と指摘した。 彼は「日本は70年前に米国との戦争で敗北し、平和国家に切り替えた。 しかし当時、日本人たちの認識に戦争や軍国主義に対する反省はあったが、植民支配に対する反省は入っていなかった。このような認識が初めて含まれたのが(植民支配と侵略に対する痛切な謝罪と反省の内容を込めた)1995年の村山談話であった」と説明して、安倍首相の演説がそれに比べて不充分だと話した。
韓日両国は関係正常化以後の50年間、歴史に対する共通の理解のために多くの努力を傾けてきた。 1995年の村山談話では、謝罪の対象が「多くの国々、とりわけアジア諸国」と広範囲に表現されたが、1998年10月の韓日パートナーシップ宣言ではその対象が韓国に特定された。日本が韓国を強制併合し100年になった2010年に発表された「菅談話」には「韓国の人々は、その意に反して行われた植民地支配によって、国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」という表現が盛り込まれた。こうした点を考慮すれば、今回の安倍首相の演説は、韓日両国が今まで積み重ねてきた歴史認識と関連した成果を大きく傷つけたと解釈できる。村山談話の主人公である村山富市元首相も21日「(首相は植民地支配と侵略などを)認めたくないということが腹の中にあるから、触れたくないのだ」と厳しい忠告をした。
木村幹・神戸大学教授は「韓国が願う植民支配に対する言及を除くことによって、今後日本は韓国と中国を分離して、韓国を孤立化させていこうという意思を明確にした」と指摘した。 実際、日本の保守的情緒を代弁する読売新聞はこの日の社説で「少なくとも1931年の満州事変以降の旧日本軍の行動が侵略だったことは否定できない」として「侵略に言及しないことは、その事実を消したがっているとの誤解を招かないか」と書いた。 社説は中国に対する配慮を要求しながらも、韓国に対しては一言半句も言及しなかった。
今回の演説で8月に第2次大戦終戦70周年を迎えて発表される「安倍談話」の枠組みが明らかになり、韓国外交の算法は複雑になっている。 特に29日に安倍首相が米国上・下院合同演説で「先の大戦への深い反省」だけを言及したとしても、米国は日本が戦争に対する謝罪をしたので、植民支配や日本軍慰安婦問題に対して明確に謝らなくとも問題にはしないだろうという展望が出てきていて、安倍首相の歴史認識を巡って韓米間の溝が深まる状況が予想される。
韓国政府関係者は「もし安倍首相が米国上下両院合同演説で第2次大戦当時の真珠湾攻撃のような内容を取り上げて戦争に対する反省の意向を示すならば、おそらく米国議会は拍手を送るだろう」とし、「そのようなムードの中で韓国が過去に対して謝罪がないとして問題提起するならば、逆に異常扱いされかねない」と話した。
安倍首相が今回の演説のように国際舞台で“謝罪なき反省”だけで裾野を拡げてゆくならば、政府発足以来一貫して強硬一辺倒で走ってきた朴槿恵(パク・クネ)政権の対日外交は根本的限界に直面する危険もある。韓国政府は「過去の問題については日本より道徳的優位にある」と強調してきたが、安倍首相の演説等を通して「日本はあのように謝っているではないか」という認識が広がりかねないためだ。